アメリカ成長株:テンエックス・ゲノミクス(10x Genomics)のアップデート
テンエックス・ゲノミクス
10x Genomics Inc
ティッカーコード:TXG
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/TXG
テンエックス・ゲノミクスについては、以前一度紹介しました。下記のページも参照ください
→ テンエックス・ゲノミクスの概要
新型コロナウイルスの感染が再度広まりつつあり先が見通せない状況が続いていますが、最近になって開発中だったワクチンが続々と治験を終えていよいよ実用化の段階に入りつつあり期待が高まっています。
驚くべきことにこれらのコロナワクチンは、突貫工事で作られた割には有効性が90%を越えている上に大きな副反応もないなど、にわかには信じがたいような良い結果が発表されています。
その理由は報道で伝えられている通り、これらのワクチン製造に従来とは大きく異なる“新技術”が使われているためで、高い有効性、短い開発期間、小さい副反応という三拍子が揃っています。
従来のワクチンは、ウイルスを弱毒化もしくは不活化して使う方法で、免疫反応で作られる抗体のどれかが感染や重症化を防いでくれることを期待するという、言わば“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる戦略”でした。
これに対して新技術で作るワクチンは、ウイルスの感染や重症化に深く関わる部分、例えば人の細胞に侵入するための鍵の部分だけを選んで使う方法で、こちらは“ピンポイント攻撃戦略”です。
ワクチンを打つ目的は抗体を作らせることですが、単にウイルスに結合できるというだけでは意味がなく、感染や重症化に関わる部分にピンポイントで結合できる抗体(中和抗体)が重要です。新技術では中和抗体が作られるウイルスの断片だけを選ぶため、従来の方法よりも効率が良い上に副反応を起こす可能性のある余計な断片を除外できる点でも優れています。
中和抗体を作らせるウイルスの断片を選び出す上で大事なのは、感染や重症化のキーポイントを見つけ出すことですが、そのためには、ウイルスの一連の動きを一つの細胞のレベルで追うことによって詳しいメカニズムを知る必要があります。また、コロナの重症化に関わっているとされている免疫の働きには様々な因子が複雑に絡んでいて、細胞の集団的な解析ではとても追いきれるものではありません。
細胞一つ一つを個別に扱う技術は“シングルセル解析”と呼ばれていて、テンエックス・ゲノミクス社が得意とする分野です。同社によると、コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発に取り組む世界中の研究者が同社のシングルセル解析を利用していて、いくつかの研究例がウェブサイトに掲載されています。
シングルセル解析は、コロナから回復した患者が持つ抗体の集団から中和抗体だけを選び出すためにも利用されていて、コロナに感染したトランプ大統領が受けて驚異的な回復を見せたことで有名な“抗体カクテル療法”に使われた中和抗体もシングルセル解析を使って選抜されたものです。
かつてないような世界規模のパンデミックが起きてしまったこと自体は大変不幸な出来事ではありましたが、膨大な費用が投入され世界中の研究者がこぞって研究に取り組んだ結果、新技術を使ったワクチンの開発が大きく前進したことは不幸中の幸いであったと言えるでしょう。
本当に恐ろしいのはコロナと比べて致死率が圧倒的に高い“鳥インフルエンザ”と言われていて、以前からこの最凶のウイルスに対抗する手段を確立しておくべきとの声が高まっていたからです。
「災い転じて福となす」のことわざ通り、今回のコロナウイルスの大流行によって短期間で有効なワクチンを開発できる新技術が確立できたとすれば、今回のコロナウイルスの出現は次の感染症に備えるという意味で大きな意味があったのかもしれません。
会社ウェブサイト
www.10xgenomics.com
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