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アメリカ成長株:パシラ・バイオサイエンシズ(Pacira BioSciences):多小胞リポソーム活用による徐放剤を開発

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アメリカ成長株:パシラ・バイオサイエンシズ(Pacira BioSciences)のアップデート

パシラ・バイオサイエンシズ
Pacira BioSciences Inc
ティッカーコード:PCRX
上場市場:NASDAQ National Market System

業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/PCRX

パシラ・バイオサイエンシズ社は主にEXPAREL、Iovera、ZILRETTAの3つの製品を製造・販売する製薬会社です。

EXPAREL(非オピオイド鎮痛薬)とIovera(神経凍結麻酔装置)については前回の解説を御覧ください(参照:パシラ・バイオサイエンシズ社の概要 )

今回は、薬剤効果の持続時間をコントロールするpMVLというカプセル化技術と、これを使ったZILRETTA(鎮痛消炎剤)をご紹介します。

鎮痛剤には高い効果に加えて長い持続時間が求められますが、一般的に体内に入った薬剤は速やかに分解・排出されるため効果が長続きしません。濃度が下がるのを補うために高い濃度で投与すると毒性が強まり副作用が大きくなってしまいますが、逆に低すぎると効果が出ないというジレンマがあります。

この問題を解決するために開発されたのがpMVLで、薬剤がゆっくりと時間をかけて徐々に放出されるように多小胞リポソームで包む技術です。一定の濃度で時間をかけて中身が放出されることを“徐放性”、その機能を持った薬剤を“徐放剤”と言います。

リポソームは、脂質で囲まれ内側が水分で満たされた球体で、これが泡のように集まった塊が多小胞リポソームです。リポソームの中には注射用医薬品、タンパク質、ペプチド(小さなタンパク質)、DNA・RNAなどの小分子から巨大分子まで、その性能を失うことなく封入できます。

時間とともに徐々にリポソームの泡が弾けることで中の分子が少しずつ放出されるようになっていて、この速度はリポソームの性質を変えることで調節できます。

痛みには急性、亜急性、慢性がありますが、pMVLは持続時間をカスタマイズすることでそれぞれに対応可能です。pMVLに使用される脂質の成分はすべて天然の化合物であり、薬剤成分を放出した後の脂質は自然に体内で分解されます。

前回紹介したEXPARELはブピバカインという局所麻酔をpMVLによって徐放性を持たせたものです。ブピバカインには心臓に対する毒性があるため高濃度では危険で、低濃度では効かず有効濃度を保つのが難しいのですが、pMVLのおかげで安心して使えるようになりました。

ZILRETTAは、多くの高齢者を悩ませる変形性膝関節炎の消炎鎮痛剤であるトリアムシノロンアセトニドというステロイドをpMVLによって脂質で包んだ徐放剤です。

一度注射すれば16週に渡って効果を発揮し続ける上、全身に広がらずに患部に留まる効果もあるため、ステロイドが引き起こす血糖値上昇などの全身への有害反応も抑えられます。

pMVLの技術は持続時間をコントロールするだけでなく、既存の薬剤に新しい機能を付加したり副作用を抑えたりする効果があるため、新規に開発するよりも効率よく新しい製品を市場に送り出すことができます。

今後も様々な既存薬とのコラボレーション展開が想定され、徐放剤のバリエーションが広がって行くことが期待されます。

 会社ウェブサイト
www.pacira.com

 

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